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2016年6月23日

第39回レモン展受賞作品【レモン賞】

御茶ノ水の画材・建築模型材料店のレモン画翠です。
2016年5月15日開催、第39回レモン展(学生設計優秀作品展)の中で「レモン賞」を受賞した作品と審査された先生方のコメントを合わせてご紹介をいたします。改めて受賞された皆様、おめでとうございます。

レモン賞

芝浦工業大学工学部建築工学科

小澤 拓夢

neoアメ横構想−アメ横のアクティビティーを残すために−
概略:戦後多くの人に食料を供給してきたアメ横。しかし今、慣れ親しまれたビルがつぶされ、高架下の耐震補強に伴い閉店を余儀なくされた店は少なくない。第一種市街地再開発の手がひとたび伸びれば、人は地権を失い、上野はアメ横のアクティビティーを失ってしまう。唯一無二の商業空間アメ横を残すため、既存の建物をリノベーションしつつ容積を満たす床を上部に積み上げアメ横に根付いた巨大ビルを提案する。「空が見え」「外気に触れ」「街路に面した商店」を残したビルは更新を重ね未来にアメ横的アクティビティーを残す。それは先祖を生かした食料を売り買いした闇市の面影になる。
審査コメント

建設的、立てるという意味でリアリティがある。昨今暴力的なものはあまり評価されない傾向にあるが「アメ横」的なものをポジティブに評価しているところが好印象。アメ横性を強化していることが、地域的戦略としていて良いと思います。


芝浦工業大学システム理工学部環境システム学科

日内地 清一

脈動する雲 −持続可能な熱狂空間の研究−
概略:1920年代に防潮堤として設えられた二つの島は周囲の埋め立てが行われ、現在は役割を失ったまま残されている。島の周辺には埋め立てによる大きな空地と、多くの人びとが隣り合う空間が存在している。湾岸地域では2020年東京五輪が計画されているが、五輪を一過性のイベントとして消費するのではなく、「持続可能な熱狂」のキッカケと捉え、湾岸の空中に運動場を設計した。人同士、あるいは湾岸の自然に触発された人が、生まれ持った「熱狂」の感覚を、顕在化させる建築を考え、そこで生じた「熱狂」を人々が相互に伝播させるための歩廊とフォリーによって構築。様々なシミュレーションを用いてそこで行われるプログラムを想定した「場」を構築した。
審査コメント

選んだ場所が湾岸なので既存の街とは一体どういう風に関係しているのか…もう少し明確であるとよかった。長い建物なので、アクセスしていく道の方向に対して既存の街との関係があればわかりやすかった。こういう提案をした途端に、既存の街に影響を与えていくので、既存の街がこう変わっていったら…という希望を提案してもいいと思う(人によっては夢物語になるので一概に良いとは言えないけれども…!)


千葉大学園芸学部緑地環境学科

鈴木 佳怜

1キロメートルの紐帯
概略:伊豆大島には日本初の溶岩導流堤がある。この巨大な土木構造物は噴火時に溶岩流の流れの向きを変えて街を守る役目を負っている。本提案では島に実在する火山博物館を導流堤の上に移設してフィールドミュージアム化することで、この壁が人と火山の絆の証、紐帯であることを感じられる場を設計する。火山博物館に展示されている過去の噴火による噴石や溶岩を屋外に展示することで、植生の遷移の様子をリアルタイムで観察することができ、敷地内のみならず島の環境全体が人と火山の絆を展示する生きた火山博物館となる。噴火を重ね、実際にこの場所が被災する様子を残していくことで永遠に成長を続ける。
審査コメント

火山から流れてくるものを堰きとめるという、普通の建築では出てこないような土木的なスケールのものが、山を横断していることが、普段の日常生活の中にどんな風にあるか、というテーマの設定が面白い。溶岩が流れてきたら潰れてしまう博物館を、溶岩を堰きとめる機能以外にはないものに移設するということで、人間の活動と一緒になった場所にするというアイディアが良いと思います。


筑波大学芸術専門学群デザイン専攻建築デザイン領域

水越 俊宇

日本橋川、5つの光明 −首都高による日本橋川の再編成−
概略:近年、景観問題が都市の中で問題視されている。本提案は首都高が使われなくなった時に想定されている「江戸風への帰化」に疑問を投げかける。この首都高高架を日本の高度経済成長により創られた東京の歴史の一部であるとポジティブな捉え方をする。首都高高架を日本橋川の再生の主軸となる水運のターミナルとして切断し、建築化する。5㎞の川上に5箇所のターミナルを点在させることで今後の日本橋川の発展を促し、水運は防災面、観光面の両面から都市機能への期待がされているため、今までの波止場としての機能に加えて、普段人々が介入することができるように隣接街に対応した観光機能を挿入していく。
審査コメント

発想が面白い(ドローイングが特に)。今まで車でしか行けなかったところに行けるようになるので、そこから「東京を内側から見る視点」みたいなものが生まれるという所が面白い。そこからどういう東京が体現されるのかが、プレゼンに出ていればもっと可能性があったと思う。


東京大学工学部都市工学科

三文字 昌也

「沁透街巷」−台湾台南市における都市空間の漸進的更新設計
概略:本提案の敷地は、台南の中心部で、道路沿いの敷地では商業が大々的に賑わい、局所的に大規模開発が進んでいる一方、細い路地の中では未利用空地・空家が増殖し続けており、高齢者の増加や住民の減少など、今後の街区の維持が危ぶまれる問題も山積している。台湾では実際の生活に対し極めて「合理的」な空間利用がそこらじゅうに見て取れる。これらのルールを汲み上げ、さらに新しい提案を交えてこれからの台南の都市更新で参照すべき「設計語彙」を作り上げた。本提案は、台南市の「籠- 皮- 餡」構造を元に、個別更新と敷地利用についての新しいシステムを提案するものである。
審査コメント

プレゼンテーションが分かりやすく、明快に自分の戦略が提案されていて素晴らしかった。建築ではなく都市工学的な提案ということではあったが、建築的発想でも「籠」「皮」「餡」の間に発見した空間を、「一体どういう空間として与えられるか」という提案を(細かい部分もしっかり見ているので、都市・建築とも両方)してもらえたら、もう少ししっくりしていたと思います。


日本女子大学家政学部住居学科

小川 理玖

「ポップアップホテル」―計画道路における仮設建築の提案―
概略:現在、外国人観光客の増加によってホテルの需要がますます高まっている中、暮らすように旅ができる新しい宿泊の形が魅力となっている。一方で、都市には多くの計画道路が存在してその多くは用地取得が完了するまでの間、利用されていないケースが殆どである。そこで都市におけるホテルのあり方と計画道路の問題という二つ事柄を掛け合わせ、用地取得が完了するまでの期間限定でポップアップホテルを提案する。街の中心地にありながら短期間に出現するスペースを活用し、用地が増えるにつれ隣接する建物に合わせて機能が充実していき、街に開かれたホテルへと変化していく。
審査コメント

余地(空き地)があればこういう風に使いたいというものをいろいろ組み立てたと思いますが、一方で既存の公共の仕組みが提供できていないという裏返しで、この提案は批判的で面白い。しかしどういう街にしたいかが見えなかった。(ポップアップホテルがなくなるだけでは寂しすぎるので)何年か続けることで周りの街に必ず変化が出るので、そこをしっかり語ってほしかった。

今後卒制を始める学生のみなさんへ

最近プログラムとして、観光やホテルが圧倒的に人気で、「住む」ことがなかなか話題になってきません。地域社会や地域の資源(公園など)を守って育ててきたのは、そこに住んでいる人たち。そこにただで乗っかって何かを建てるという風潮が大きいと思うが、自分たちが作るものも地域に恩返しできるような、そういう観点でものを考えてもらえたらいいと思います。住むということは一番手っ取り早いし、そこに責任を持つという人もいると思うので、そういったことの可能性を場所によっては考えてもらいたいと思う。長期間、その地域を作り育っていくのはそこに住んでいる人がいるからで、住む人のことも一緒に考えてくようにすると魅力的なプロジェクトになると思います。