第36回レモン展「レモン賞・池原義郎賞」をダブル受賞をされた早稲田大学創造理工学部建築学科 赤池一仁さん 池田成介さん 西原宗一郎さん(明日の国際風景 ー旧羽田空港跡地における国際物流の可視化ー)から赤池一仁さんに制作中の思い出などを振り返っていただきました。なお、レモン画翠では模型と出品パネルの一部を店舗ウインドウに展示しております。ぜひご覧いただければと思います。
『日本を創造する第一歩としての卒業制作』早稲田大学建築学科を卒業した私達の先輩には、未来の日本を築き上げている方が大勢います。私達は卒業制作において、先輩達のように活躍するための第一歩として実際の社会に貢献することの出来る計画がしたいという目標・創作態度を掲げました。そのような中で現在の日本社会において最も開発が検討されている場所を選択し未来の日本を描くことを決めました。
『世界の中で流動している場所を探す』将来の日本の未来を考えるならば、世界・特にアジア圏の中で日本国が如何に立場を築いてゆくのかを考えることは必要不可欠な事柄となっています。私達は日本という国を世界的視野で眺めることから計画を始めました。TPPに関する一連の議論や最近のオリンピック東京招致を始めとしてこれから日本国は更に国際化します。この国際化背景は必ず日本経済を流動させ、建築・都市、そして文化・文明に影響を与える事象であると討論しました。
『卒業論文と卒業制作の連携』早稲田大学では、卒業制作を行う前に自身が興味関心を持っている研究分野を卒業論文として執筆します。スペイン・カタロニア地とアメリカ大陸・西インド諸島の新興産業ブルジョアジーの国際資本関係性からA・Gaudiを研究した赤池(意匠系)、国際資本が集中し世界的に発展した上海金融都市を研究した西原(都市計画系)、東日本大震災を経験し、今後起こりうる首都直下型地震に対して、防災を多角的視点から研究した池田(環境防災系)の三人でチームを組み、これらの専門的な知識を計画に反映する事を目指しました。
『明日の国際風景』対象敷地は羽田空港開発の余剰として遊休地化した53haに及ぶ広大な旧羽田空港跡地です。対象敷地を保税地域に指定し、国際的な摩擦を消失させることで、新しい規格・寸法の設計を可能にさせ、空港地下20mを通るJR旧在来線である東海道貨物支線を掘り起こし、引き込み線として計画することで、京浜港各地域を始めとする日本全国の国際貨物取扱地域と連携を取った総合保税市場を計画しました。この場所では、日本に持ち込まれる国際貨物の一部や京浜港一帯・日本各地に点在している保税地域での海外輸送在庫を敷地内に保税状態のまま輸送し、免税状態で展示、オークションを行う事で、国際貨物の取引を容易に行うことが可能です。国際化が叫ばれる未来の日本において、首都圏に近接する旧羽田空港国際線地区は、本計画により日本を代表する国際市場へと飛躍し、新たな場所を獲得してゆきます。
『2014年以降、卒業制作を行う後輩へ』超高齢化社会を迎え、縮小化が叫ばれる現在の日本国ですが、それでも明るい未来を描こうと奮闘している人達は大勢います。私達は東日本大震災を経験し、必死に復興する日本の姿をいま現在経験しています。縮小化をマイナスに捉えずに、私達が本当に描きたい未来は何かを真剣に考えてみてください。日本は現在転換期にあり、社会の流動・変化は大変激しいです。この変化は必ず建築や都市に建ち現れ、人々に影響を与えるはずです。そしていつしかそれらの総体は文化・文明となり、歴史になってゆくはずです。
『おわりに』卒業制作では多くの先生方や先輩に指導の機会を賜りましたし、作品を提出する際、多くの後輩達が力を貸してくれました。そして、レモン画翠様をはじめ、多くの方々に発表する機会を与えていただきました。発表の場では様々な方にご指導をいただき、早稲田建築だけでなくあらゆる分野の方々と出会うことで、より広い視野で建築を考える事が出来るようになりました。この場を借りて御礼を申し上げます。
文責 赤池一仁 (早稲田大学院 建築学専攻 入江正之研究室 修士一年)