ホルベイン画材講習会(講義編)
2019年12月16日
2F:アメリカンチップボード
2019年12月18日

ホルベイン画材講習会(実技編)

→講義編はこちら

実技

ここからは実技となります。同じ手順で様々な種類の水彩紙に色を塗っていき、絵具の発色や紙の違いを比べます。
絵具は「ホルベイン透明水彩絵具」から「レモンイエロー」「サップグリーン」「バーミリオン ヒュー」「プルシャンブルー」の4色を使用しました。

筆は「ブラックリセーブル」シリーズの「SQ」。
リス毛にリセーブル原毛を混合した筆で、水含みがよく根本が太めなので広い面も気持ちよく塗れ、穂先を使えば細かなところも塗れる便利な筆です。

今回のモチーフは「玉ねぎ」!下絵もすでに描いていただいております。

絵具の量など結構ばらついていますので厳密な比較にはなりませんが、色を塗ったときの感想や紙の特徴などまとめましたので、参考になれば幸いです。

一連の手順は以下のとおりです。(※例は全てウォーターフォード中目を使用)

 

1.下書きの内側をきれいな水でたっぷり濡らす

2.玉ねぎ全体にレモンイエローを塗る

3.玉ねぎの輪郭にサップグリーンを塗る

4.玉ねぎ中央にバーミリオン ヒューを塗る

5.玉ねぎの頭と根元にプルシャンブルーを少し置く

6.爪楊枝で溝をつけるように玉ねぎの皮の筋を入れる(溝に沿って自然に絵具が流れ込む)

7.サップグリーンとバーミリオン ヒューを混ぜた茶色で玉ねぎの根を筆の穂先で払うように塗る

8.きれいな筆でハイライトしたいところの絵具を吸い取り(白抜き)、完成!

水彩紙の比較

※写真は左から 手順3のにじみの比較・乾燥前・乾燥後 の順になっています。
 実習の際はできるだけ絵具の「にじみ」による自然な混色を心がけました。

*ウォーターフォード ホワイト:中目
(イギリス製/コットン100%)

塗れた絵具の上に色をのせるとサッと滲みが広がりとても綺麗。水分もかなり残るので画面上の自然な混色がしやすく感じました。
爪楊枝で溝をつけるやり方は初めてだったのですが、葉脈などは筆よりもこのやり方のほうが自然に仕上がるとのこと。溝に沿って色が入っていくのも面白いですね。
白抜きは広めに抜かないと色が戻ってくる事があり、慣れとテクニックが必要ですが、ティッシュなどで抜くより自然な感じになります。

 
*ウォーターフォード ホワイト:細目
(イギリス製/コットン100%)

表面が平滑なので細密な線を描くのに向いていますが、広い面に色を載せると水分が偏りやすく、色にムラができることも。中目と比べてにじみの範囲が狭く、繊細に広がる印象でした。
他のものより薄いのは私が絵具の加減を間違えたせいもありますが、画面が平らな分白抜きがしやすかったというところもあります。

 
*ウォーターフォード ホワイト:荒目
(イギリス製/コットン100%)

荒目はその凹凸の風合いを活かして広い面を均一に塗れるという強みがあります。
にじみの範囲も広く、紙の目の間を縫ってスルスルっと色が広がっていく感じなので、コントロールに慣れが必要かもしれません。

 
*ウォーターフォード ナチュラル:中目
(イギリス製/コットン100%)

最初の真っ白なウォーターフォード中目と比べると発色の鮮やかさは落ちますが、白抜きも抜けすぎず全体的に柔らかな印象に。画風や描く内容によってはこちらのほうが向いている場合も多いかと思います。
ちなみにウォーターフォードは高温多湿な日本ではサイズ剤に影響を及ぼすことがあるので長期間放置せず早く使い切ったほうが良いそうです。

 
*ホワイトアイビス:中目
(日本製/コットン高配合)

ホルベインオリジナルの紙。ウォーターフォードのホワイトとナチュラルの中間くらいの発色なのでどんな絵でもフラットに使いやすい紙です。
ウォーターフォードに比べて平均的ににじむ印象。乾燥後も紙目の風合いがわかりやすいです。

 
*アヴァロン:中目
(イギリス製/コットン100%)

ホルベインオリジナルの高級水彩紙です。色をのせた瞬間はっきりわかるくらい鮮やかな発色でした。乾くと少し落ち着くのですが、それでも他の紙と比べると「濃い」仕上がりに。にじみの幅もこれまでの紙の中で一番広かったです。(乾燥前の写真を撮り忘れました…)
水弾きが強くかなり長い間画面上で混色できる反面、乾きが遅いので白抜きの水戻りも多く、すぐ乾いてほしい場面には不向きかもしれません。

 
*ストラスモア:中目
(アメリカ製/コットン100%)

非常に表面強度がある紙で、重ね塗りや洗いに対しても頑強なアメリカ製の水彩紙。
他の紙に比べてにじみ方が木の根のような独特の風合いなのも面白かったです。
画面上の自然な混色はウォーターフォードよりムラが有るように感じましたが、一つ一つの色はかなりはっきり出る仕上がりになりました。

 

ここでタイムアップ。他にもクレスター水彩紙、アルビレオ水彩紙、H画用紙もご用意いただいておりました。
ちなみに後でメインの色だけ塗らせてもらったH画用紙(乾燥後)がこちら。
これまでの水彩用の紙と比べて全然にじまず、画面上の自然な混色が進んでいないことがわかります。
その分乾きが早いので出先のスケッチやにじまない効果を狙う時など、場面によって使い分けると良さそうです。

まとめ

限られた時間ではありましたがボリューム満点!基本をおさえた講義と実技で、より感覚的にホルベイン製品の特性を実感できた講習会でした。
小売店としてはどうしてもチラシやWEB、プレスリリースなどの広告媒体からの情報を頼りに製品の特徴を掴むことが多いので、このように実際に体験できる機会をいただけたことはお客様に伝える際にも大きなプラスになり、本当にありがたく思います。
最後になりましたが、今回ご講義いただきましたホルベイン画材株式会社 K様、H様、S様に心より御礼申し上げます。

ホルベイン画材株式会社の公式HPはこちら
https://www.holbein.co.jp/
画材について興味のある方は「資料室」の「色材の解剖学」というコンテンツがオススメです!

レモン画翠1Fではホルベインの透明水彩絵具、ガッシュ、筆、水彩画用紙など色々取り揃えております。気になる商品がありましたらスタッフまでお声がけください。