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2020年度 法政大学建築学科 卒業設計有志展:レポート

御茶ノ水の画材・建築模型材料店のレモン画翠です。
千代田区にある「アーツ千代田 3331 コミュニティスペース」にて、弊社が協賛させていただいた『2020年度 法政大学建築学科 卒業設計有志展』(以降有志展)が、2月17日・18日に行われました。
(記事の下部に展示会の様子を撮影した写真があります)


今回の有志展は、法政大学建築学科2020年度の卒業設計を制作した学生たちが主体となり、展示の企画・運営を行なっていました。四年間の集大成として制作した卒業設計を、授業や課題でお世話になった先生方やご家族・友人・先輩後輩の皆さんと共有しあえる貴重な機会との事。
さらに、有志展という特性を活かし、第一線で活躍している著名な建築家の方や他大学の教授へ、学生自らアポイントを取り審査員としてお招きしたそう(素晴らしい行動力と熱意です…!)。普段の環境とは異なる観点から講評をしてもらう事で、新たな学びや気付きを得る機会となったのではないでしょうか。
■法政大学建築学科 卒業設計有志展アカウント
Twitter(@hoseiyousee2021
Instagram(@hosei.yusiten2021

弊社から取材へ向かったスタッフも最後の講評会まで参加し拝聴させていただきました。午前中は学生一人一人の講評を一対一で行う、巡回形式の講評が行われ、どこか緊張した面持ちで講評を待つ学生の皆さんの姿が印象的でした。審査員の講評結果を集計し、夕方から行われた講評会では、一つの作品をピックアップして審査員それぞれの意見を述べ、必要なら学生・審査員問わずディベートを交わし合う様子が繰り広げられました。出展作品の中から3名を優秀賞として選ぶ最終選考では、審査員同士の卒業設計に対する思いがこめられた議論が何度も交わされ、取材スタッフもドギマギしながら興味深く拝聴していました。

そして、最終選考にて受賞された優秀賞・各審査員の個人賞にそれぞれ選ばれた方は下記の皆さんです。受賞おめでとうございます!

■優秀賞

瀬谷裕人さん
『「赫」文化的民家群風景の再編』

宮澤哲平さん
『Urban Village Building "S" ー働き開きによる新しい共同体の構想』

長岡杏佳さん
『儚きものからの再編ー二畳半の空間のあり方』

石井冴さん
『まちを継ぐー郊外住宅を境界から再考する』

■審査員個人賞

山道拓人先生:廣瀬萌音さん
『トキドキハレー町の顔となる駅前空間の再考』

中川エリカ先生:田伏莉子さん
『映り変わり - 世田谷線の境界』


髙橋一平先生:関根康成さん
『神林考まちの背中に残る中庭』

谷尻誠先生:葛城まおりさん
『キノウの遺産』

手塚貴晴先生:髙木夏奈子さん
『 ” とっておき ” の宿るみち公開性をもつ住宅がつくる商店街の形』

内藤廣先生:田中麗子さん
『展開店舗併設住宅による ミセ+ミチ の再考』


また、今回の有志展の主催・運営である法政大学の学生の方へ取材スタッフが行なったインタビューを掲載します。有志展のはじまりのきっかけや開催に至るまでの思い・エピソード、これからの未来に対する建築への考え方など、現代を生きる学生としての立場から感じている思いをお聞きしました。

 

⸻今回で4回目となりますが、1回目の有志展発足のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

 当時、毎年5月から6月にかけて、市ヶ谷田町キャンパスにて卒業設計優秀賞の作品展示を行っていましたが、より多くの作品を幅広い方に見ていただく機会を創出したいという想いから発足いたしました。

⸻今年はコロナ禍での開催となり、特別な思いもおありかと思います。そのあたりをお聞かせください。

 今年はコロナ禍によってオンラインエスキス・自宅で卒業制作が行われました。
皆が現在の建築や都市に対する沸々と湧き上がる思いを内に秘めた一年であり、「リアルでの議論・展示がしたい」という有志学生皆の思いがありました。
その思いが叶った展覧会でした。
3331 Arts Chiyodaという素晴らしい会場で、個々の自由空間を作ることによって湧き上がる思いを展示空間に昇華でき、素晴らしい審査員の先生方と生の議論ができました。
協賛企業の方々、受けてくださった審査員の先生方、会場の3331 Arts Chiyodaの御担当者様には感謝申し上げたいです。

⸻開催準備中の思い出に残っているエピソードなどあれば、ぜひおしえてください。

 コロナ禍で対面で学生間同士の会議ができない中、zoomやSNSを駆使して議論しながら進められたことは大変貴重な経験でした。
例年より苦労するところは多かったですが、その分内容が決まっていくにつれ、開催日が楽しみになったのを覚えています。

⸻審査員の先生方のお話で、強く印象に残っているお話があればおしえてください。

 建築を建てることを怖がっている、理論で留まってしまっている。というお話が何度も話題になった事が印象的でした。
出展された作品は10月に提出する卒業論文からテーマをつなげている作品が多いです。
敷地や概念に関する論文を書く人が多いのですが、その前段階から抜けきれず、建築物として消極的な結果になってしまったかと考察しています。リサーチや都市分析に時間をかける事は法政の持ち味だと思っています。そのため、法政内部での観点や比較では気づくことができなかったことだと感じています。

「卒業」に関しては髙橋先生が実家に帰って家族に説明して、伝わる事が社会に建築を提案することの第一歩と話されていた事が印象的でした。設計課題では利用者を設定し、周辺環境への影響も想定して提案を行いますが、あくまでも仮想の話です。卒業後の進路はそれぞれですが、これからはその家族のような存在する人に向かって提案をしていくんだなと実感しました。

⸻これからの時代における建築というジャンルの役割についてどう思われますか?

 多様な視点を持ち、未来の生活の基盤となるような空間のあり方を提案していくことが建築の役割だと思います。今回の有志展では出展者全員で意見を出し合い、展示空間を作ることで、コロナとうまく付き合いながら開催が出来ました。これがアフターコロナの卒業設計展の一つの指針となり、後輩たちがさらにクオリティ高めるきっかけづくりはできたと思います。

⸻来年度の開催に向けて、一言お願いいたします。

 毎年メンバーが全員入れ替わることがこの展示の魅力の一つだと考えています。
今年度は話し合いの結果、展示の充実・学内と異なる講評会・オフラインでの開催を主軸として活動してきました。この3点を決めることは企画者として考える学外展を行う意義と出展者として考える今年の状況への不満の均衡点を探す作業でした。

大学生活を振り返ると、卒業論文・卒業設計は最も自由度の高い課題です。テーマを設定し、自分の評価軸を設定しどこに問題があるのかから考え始めます。 その時期に企画したため、俯瞰して二つの立場から考えることができたように思います。

来年度は現在の3年生がメンバーとなって企画を行います。
卒業設計自体はもちろんですが、彼らが何に価値を感じ、どんな展示会を目指すのか。
それが私達の物と異なっても、同じでも、来場者として訪れるのを楽しみにしています。