卒制バックアップセール 2010 1F
2010年12月15日
レモン展 作品集
2010年12月20日

「レモン賞・槇文彦賞」齋藤 誠さん 卒業制作を振り返って

本年開催の第33回レモン展出品卒業制作77作品の中から「レモン賞・槇文彦賞」をダブル受賞をされた東京電機大学・齋藤 誠さんに制作中の思い出を振り返っていただきました。模型写真とともにご紹介いたします。(M)

当時、やりたい事が多過ぎてひとつに絞ることがかなり苦しかった覚えがあります。そんな悶々としていたある日、研究室の山本圭介先生の「建築が一つの敷地で完結するのはコルの時代で終わったんだよ」との何気ないつぶやきがとても印象に残りました。

そこからすんなり、以前から疑問であった小学校建築に対する息苦しさや中途半端さみたいなものとリンクし、これだ!という感じになりました。提出3ヶ月前位でした。

次に敷地の取り方を相当考えました。小さな敷地を街のいたる所に取る点在型では、小学校を中心として街を計画する方法に肯定的な立場だということと、散在させることで馴染み過ぎ、人の人生において最も濃いであろう6年間を送る小学校建築がコミュニティーセンターになってしまうことを避けたいという意識がありました。

超広範囲にわたる一つの小学校の設計も考えましたが、空間の隅々を把握しながら子供達の使う空間を設計したいと考えていたのでやめました。同時に、以前から平面的で細長い形態に可能性を感じていました。城壁や線路、カーブすることでその街の裏表を作り出すというのがとても面白いと。その裏表も「白と黒」ではなくグレーのコントラストに近い感じでつくられていくことも。

そんなこんなで
・空間を把握できる規模
・平面的に細く長くつながった形態
・今後拡張可能であろう形態

を意識して敷地の取り方を検討しました。

同時に、趣味の街歩きで感じていた江東区の密集する小学校と新旧混合したヒューマンスケールの街との関係に対する可能性がぱっと浮かびました。

そこからは突き進むのみです。出題者も回答者も自分であることに悩まされました。実現しないにしろ、少しでもリアリティーをもたなければモチベーションが上がらないとわかっていたので、敷地に何度も足を運び、老朽化した家や空き地を探しては、敷地として潰してしまう建築をすべて見てまわり、慎重に敷地を選定しました。そこからはスタディ模型をひたすらつくる日々で、学内では一番作っていた自信があります。しかし、本模型に差し掛かる際、模型が大きすぎて制作するスペースの問題に直面しました。そこで、A2サイズの木製パネルに部分を少しずつ作り、全体を構成することにしました。小さな達成感が積み上がり、いつの間にか全体が出来、大きな達成感になりました。やれるところまで全力でやる!間に合わなかったらそこまでで出す!というスタンスだったので思い切りできました。

添景はクラフトロボを活用し、お手伝いさんの負担を減らしました。お手伝いさんも様々な生活リズムの人が集まってくれた為、作業がストップする日はありませんでしたし、新たな交流をサポートすることが出来ました。お礼のごはんにはふんだんに資金を使いました。(笑) そんなこんなで最後まで和やかな雰囲気で作業できたことはかなり嬉しかったりします。数多くの人の支えや、幸運と工夫で乗り切った卒業設計でした。