国立新美術館で開催されています「
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」に行ってきました。会期は9月5日(月)まで。
アメリカの首都、ワシントンD.C.に位置するワシントン・ナショナル・ギャラリー。12世紀から現代に至るまでの西洋美術コレクション約12万点を所蔵する、世界有数の規模と質を誇る美術館です。驚くことにその所蔵作品はすべて、実業家で同館の創設者である、アンドリュー・メロンとその志に賛同した一般市民からの国への寄贈によるものです。それはまさに、アメリカ市民が創った奇跡のコレクションといえます。本展では、同館でも特に質が高いことで知られる印象派とポスト印象派の作品の中から、日本初公開約50点を含む全83点を紹介します。しかも同館の心臓部ともいえる「常設コレクション作品」に指定されている傑作が9点も含まれるという豪華さ。一度に12点までしか貸し出すことができないという不文律があり、これほどの点数がまとまって貸し出されるのは極めて稀です。まさに「これを見ずに、印象派は語れない」アメリカが誇る珠玉のコレクションを、是非ご覧下さい。
印象派の作品を見るのは「モネとジヴェルニーの画家たち」以来。混雑を覚悟していましたが、国立新美術館はゆったりした配置でとても見やすいです。全83点の内、エッチングや水彩を除いた油彩は56点。ちょっと少ないのではと思いましたが、あまりの傑作揃いに目が眩んでしまいます。
セクションは、
1.印象派登場まで
2.印象派
3.紙の上の印象派
4.ポスト印象派以降最初の
「印象派登場まで」では、マネの
《オペラ座の仮面舞踏会》と
《鉄道》がメイン。この2点を観るのは混雑でちょっと厳しい。意を決して面前まで突撃しましたが、柵で近くに寄れずディテールまでは分からない。マネを見るのなら10cmくらい顔を近づけて見てみたいです。あとバジールの
《エギュ=モルトの城壁》が良かった。近く観ていた小さな男の子も「これすごくキレイだね」って…。
エドゥアール・マネ 《オペラ座の仮面舞踏会》1873年 油彩・カンヴァスNational Gallery of Art, WashingtonGift of Mrs. Horace Havemeyer in memory of her mother-in-law,Louisine W. Havemeyerエドゥアール・マネ 《鉄道》1873年 油彩・カンヴァスNational Gallery of Art,WashingtonGift of Horace Havemeyer in memory of his mother, Louisine W. Havemeyer「印象派」はモネの
《日傘の女性、モネ夫人と息子》《ヴェトゥイユの画家の庭》《太鼓橋》が並ぶ一角がポイント。混雑も少しバラけて見やすくなります。
公式WEBコラム「木谷節子のワシントン、ちょっとのぞき見」Vol.14「モネのファンタジー」から
風が吹き抜けていく《日傘の女性、モネ夫人と息子》は圧倒的に素晴らしいですが、《ヴェトゥイユの画家の庭》もいい感じです。自分の頬に陽が当たっているように暖かく感じるのです。たいしたことないかなと思ってもモネは観るたびに驚きの連続です。その他では
《アンジャントゥイユ》、ドガの
《舞台裏の踊り子》、
《アイロンをかける女性》、ルノワール
《踊り子》が良かった。
クロード・モネ《日傘の女性、モネ夫人と息子》1875年 油彩・カンヴァスNational Gallery of Art, Washington / Collection of Mr. and Mrs. Paul Mellonクロード・モネ 《ヴェトゥイユの画家の庭》1880年 油彩・カンヴァスNational Gallery of Art, Washington / Ailsa Mellon Bruce Collection「紙の上の印象派」文字通りに油彩ではなくエッチングや水彩など支持体が紙の作品。とてもめずらしい作品ばかりです。マネ、カサット、ゴーギャン、ゴッホ、ロートレックなど。その中でもセザンヌの水彩画
《ゼラニウム》が素晴らしい。
最後の
「ポスト印象派以降」ゆったりとした部屋に作品が14点のみ。全てが傑作に値します。ロートレック2点、スーラ2点、ゴッホ3点、ゴーギャン1点、そしてセザンヌが6点。圧倒的にスーラ・ゴッホ・ゴーギャンに皆さん集まっていて、入口ではあれほど混雑していたのにここでのセザンヌはゆっくり見放題です。これぞセザンヌの
《りんごと桃のある静物》、いつまでも見とれてしまう
《赤いチョッキの少年》。そして風景画の2点もすごい。塗り残しバッチリの未完成の美学です。
ポール・セザンヌ 《りんごと桃のある静物》1905年 油彩・カンヴァスNational Gallery of Art, WashingtonGift of Eugene and Agnes E.Meyerポール・セザンヌ 《赤いチョッキの少年》1888-1890年 油彩・カンヴァス<
National Gallery of Art, WashingtonCollection of Mr. and Mrs. Paul Mellon, in Honor of the 50th Anniversary of the National Gallery of Art図録はとてもおもしろい構成です。見開きに1つの作品で左ページが全体、右ページはタッチが分かるくらい拡大された部分が載っています。「Google Art Project」を意識している感じです。
1Fの
カフェ・コキーユでワシントン・ナショナル・ギャラリー展特別ドリンク「ローズヒップ&ピーチ」で小休憩です。日頃の荒れた食生活にビタミンCが充填されてリフレッシュしました。
「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」展とのコラボドリンクとして、2種類のアイスハーブティーをご用意しました。「ローズヒップ&ピーチ」は、ポール・セザンヌの《赤いチョッキの少年》から赤色を表現。ローズヒップとピーチによる酸味と甘味の爽やかなハーモニーを醸し出します。「ローズマリー&パイン」は、クロード・モネの《ヴェトゥイユの画家の庭》より、庭に咲き乱れるひまわりをイメージ。パイナップルの甘味にローズマリーの香りが広がる、すっきりした味わいが楽しめます。