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建築家 白井晟一 精神と空間

パナソニック電工汐留ミュージアムで開催されています「建築家 白井晟一 精神と空間」に行ってきました。会期は3月27日(日)まで。地震の影響でそのまま中止になるかと思いましたが、残すところ2日間。

哲人あるいは詩人と呼ばれ、あるときは孤高あるいは異端と形容され、生前から神話化されていた建築家、白井晟一(1905-1983)。戦後日本のモダニズムの潮流からスタンスを置き、初期の木造建築から黙示的な原爆堂プロジェクト、そして代表作の親和銀行本店から以後の展開に至るまで、象徴的で物語性に満ちた形態と光に特徴づけられる独自の建築を生み出しました。その建築作品や書、装丁、エッセイ、あるいは建築家としての活動を近代日本の中でどのように位置づけるべきなのでしょうか。本展は彼が遺した様々な表現を星座のように布置し、その全貌に迫ります。



カタログでは《哲人、詩人、孤高、異端、震撼、天才、謎、神格化》とすごい文言があちこち出てきます。これじゃほとんどレオナルド・ダ・ヴィンチなわけじゃないですか。若かりし頃ドイツで哲学を学び、パリでは林芙美子と恋をして、建築のほかに装丁家、書家・エッセイストとしても優れた作品を残している。展覧会題名が「ANIMA et PERSONA」ーアニマとペルソナですよ。何がなんだかわからないけど観に行くしかないでしょう。

展覧会の構成は、
「住」ー 初期の木造住宅から自邸の完成まで
「塔」ー 聳え立つ都市の標
「原爆堂」ー 核を保持した文明へのメッセージ
「幻」ー 実現されなかった作品に見る造形の原型と理想
「共」ー 公共の追求
「祈」ー 聖なる空間


とんでもないものが並んでいるわけではなく、各セクションにはエッセイが一編と建築作品の図面、写真、模型、装丁、書などが展示されていました。

「歓帰荘」「渡辺博士邸(試作小住宅)」「呉羽の舎」「虚白庵」「親和銀行東京支店」「親和銀行懐霄館」「ノア・ビル」「原爆堂計画」「東北労働会館計画」「秋ノ宮村役場」「善照寺本堂」「親和銀行大波止支店」「サンタ・キアラ館」ー白井晟一の代表作がほぼ網羅されています。
親和銀行電算事務センター(懐霄館)1973-1975年(撮影:村井修)



建築にまつわるエピソードなどは興味深いですが、建築自体がすごいのかどうか分からないのがもどかしいです。展示物を見ながら手持ちの図面にしきりにディテールを書き込んでいる方がいらしてちょっとビックリです。一作品20分くらい掛けていますのであの感じでは一日がかりになるかもしれません。
東北労働会館計画 透視図 1957年(撮影:久保良)


やはり目を惹きましたのは「原爆堂計画」。シリンダーに持ち上げられた立方体、まさに核融合で生まれたような造形。
原爆堂計画 鳥瞰図 1955年(撮影:久保良)
きっかけは、丸木夫妻の描いた「原爆の図」だった。「かれらがその画をおさめるための美術館を建てたいという意向をもっているという」一片の新聞記事である。「彼は丸木夫妻を知らなかったばかりでなく、《原爆図》すらも知らなかった。しかしこのニュースは彼の造形意欲をかりたて、まったく独立して原爆美術館の設計に着手させたのである。」「さらに驚くべきことには、そのためにだれからの援助も仰がず、他の仕事をすべて放棄して、ただ一人の助手とともにこれにぶつかったのである。展覧会図録「白井晟一 精神と空間」p53

話はちょっと変わりますが、目黒美術館で4月9日から開催予定の「原爆を視る1945ー1970」が諸般の事情により開催中止。丸木美術館から《原爆の図》も展示予定でした。

書では展示の最後にある「般若心経」の写経がよかったです。氏の書はあまり崩してなく読みやすくそして丸っこくてかわいい感じなのです。それでいてものすごい勢いと集中力。

いつもの通り《ルオーキャラリー》も観てきました。今回は「聖顔」「道化師」「マドレーヌ」などの油彩と版画集『ユビュおやじの再生』から6点。見たかったものばかりなので感動でした。なお白井晟一の展示には、自分に似ていると気に入って所蔵していた版画集『ユビュおやじの再生』の「政治屋」が展示されています。

図録「白井晟一 精神と空間」2, 940円。「呉羽の舎 設計図 矩計詳細図-4」のおまけ付き。価格にちょっとビビりましたが、内容は氏の作品同様ものすごく濃密。重要なエッセイ3編、磯崎新の特別寄稿「フラッシュバックする白井晟一」など。建築家なんてやってられなくなるかもしれません。この後は5月23日から京都工芸繊維大学美術工芸資料館へ巡回します。(K)