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ヘンリー・ダーガー展

ラフォーレミュージアム原宿で開催されています「ヘンリー・ダーガー展〜アメリカン・イノセンス。純真なる妄想が導く『非現実の王国で』」に行ってきました。会期は5月15日(日)まで。

家族も友人もなく、天涯孤独に生きたヘンリー・ダーガー(1892-1973)。彼は、自身が夢想した物語『非現実の王国で』の中で生き、そこで起った出来事を、生涯を賭して記録しました。ダーガーにとって『非現実の王国で』を綴り描くことは、人に見せるためでも、余暇の楽しみでもなく、生きることそのものでした。その不可思議な世界観と強烈な表現欲求は観る者を圧倒し、魅了し、心を捉えて離しません。しかし、この物語を生み出したダーガーという人物は多くの謎に包まれたままです。彼が人生の後半40年を暮した部屋から見つかった遺品や書き物を手がかりに、ヘンリー・ダーガーの虚実に迫ります。

セクションは、
幼少期にフォーカスをあてる[Early Days]
興味を抱いていた事物を紹介する[Archeology of Henry Darger’s Room]
「非現実の王国」の挿画64点を展示する[Welcome to the Realms of the Unreal]
自叙伝と本邦初公開となる遺品を紹介する[History of My Life]
様々な分野の著名人から寄せられたコメント[Hommage]

アウトサイダー・アートの代表的作家して知られるヘンリー・ダーガー。4歳で母親と死別し、8歳で児童養護施設へ収容。12歳のときに劣悪な環境の精神薄弱児収容施設へ移送されるが17歳で脱走。シカゴの病院で清掃人として働く傍ら、誰に知られることなく60年もの長きにわたり私小説「非現実の王国で」を著述。
キラキラ輝くブレンゲン。ボイ・キング・アイランズ。一匹は年若いタスカホリアン、もう一匹は人の頭をしたドロテリアン。Collection of Kiyoko Lerner (C)Kiyoko Lerner, 2011

物語の正式名は「非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコーアンジェリニアン戦争の嵐の物語」 7人の美少女姉妹が、子供を奴隷として虐待する暴虐非道な男たちを相手に壮絶な戦いを繰り広げるという物語を延々と綴った。執筆は11年以上続き、15, 145ページからなる15巻の大著。挿絵は数百枚におよぶ。

挿絵は小説の完成後から製作されます。雑誌、カレンダー、新聞、広告などありとあらゆる媒体から7人の美少女姉妹ヴィヴィアン・ガールズのイメージの蒐集から始める。自分のイメージに合うように着色してコラージュして作品を作り上げていく。この辺りはアイコラに近い感じなのか。

しかしこの後、よりクリエイティブな方法を編み出します。塗り絵原稿を作るようにイメージを紙にトレースし始めます。私は最初トレペのような透ける紙でイメージをトレースしているのではと思い込んでいましたが、カーボン紙など使って紙に転写する方法です。さらに驚くことに、鏡面したり角度を変えて配置したり、またいくつのもイメージを組み合わせることで希望のポーズに作り出しているのです。着色に関しては、原稿の年代が不明なのでわかりませんが、ただの平塗りから陰影がきれいについているものまで様々。長い期間描き続けているわけですから明らかにうまくなっているのだと思います。

(左)サリー・フィルダー、デイジー、へティ、ヴァイオレット、アンジェリニア・アーロンバーグ、ジョイス、ジェニー、アンジェリン、キャサリン、マージョリー・マスターズ 
(右)マルコチノの第二戦、グランデリニアンが仕掛けた破壊的爆発からも逃走。Collection of Kiyoko Lerner (C)Kiyoko Lerner, 2011

彼のプロフィールを見るだけで驚きの連続。作品を見る時に気持ちが引きずられてしまうのは仕方ないでしょう。作品の多くは紙の表裏に描かれていて、両面が見られるように展示されています。

ちょっと残念だったのは公式図録がなかったこと。展覧会オリジナル「ポストカードボックス」を購入しました。横長のポストカードはとても素晴らしいです。今回はジョン・マグレガー著、小出由紀子翻訳の「ヘンリー・ダーガー非現実の王国」を参考にしました。(K)