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「レモン賞・トムヘネガン賞」飯嶋 優さん 卒業制作を振り返って

本年開催の第34回レモン展出品卒業制作作品の中から「レモン賞ートム・ヘネガン賞」をダブル受賞をされた芝浦工業大学工学部建築工学科 赤堀研究室 飯嶋 優さん( LABYRINTH ー自己相似による高層都市と居住の均衡ー)に制作中の思い出などを振り返っていただきました。

はじめに
嵐のように過ぎ去った卒業制作も、改めて振り返ってみると、ふるさと信州での生い立ちや建築に興味を持ち始めたきっかけにまで遡るプロジェクトとして咀嚼することとなってしまいました。様々なスピード感の中で取り組んだ卒業制作を採集期、編集期、凝集期と3つに区分して振り返りました。

採集期(3年後期くらいから4年生になるまで)
大学3年時、先輩の卒業設計を手伝っているときに、ゆっくりと僕の卒業設計も始まっていきました。当時は先輩たちの作品はもちろんですが、それだけでなくいろんな本、旅、マンガ、Youtube、面白い人との会話など日常のあらゆるものが卒業設計につながっていく可能性がありました。とにかくいろんなことに関心を持っていた時期で、何かやらなきゃいけないことがあるからという理由で、面白いことに出会う機会を失うことを避けました。何かに触れては頭の中で勝手にシナリオを組み立てて自問自答し、イメージを膨らませていました。今ふりかえるとこの時培ったイメージの集積は後々に活きてきていたと思います。池田亮司さんの+/ーという現代美術館の特別展やパリ・ベルヴィル建築大学での一か月の交換留学などに強い影響を受けました。どんなに大きなヴォリュームでも目を凝らした時に微細な世界が発見できるようなものを作りたいと、ぼんやり考えるようになりました。

編集期(4年生春から12月いっぱい)
4年生になると、公式に卒業設計への歩みが始まりました。前期はシナリオを組み立てながら、できるだけ共感を得る為の客観的な視点を意識しました。この時の構想は、まだどうとでも転ぶことのできる、あまり拘束力のないものに留めていた気がします。先の見えない不安がありましたが、徐々に手を動かしたときに、さらに作品を飛躍させる伸びしろを残すことにつながったと考えています。

夏を過ぎてからは、焦りを感じながら具体的な構想に入っていきました。敷地、容積、機能など決定していかなくてはならないことと格闘した時期です。秋まではできるだけ多くの人に話を聞いてもらいました。その時に注意したことは、聞くだけでなく聞いてもらうことに重点を置いたことです。最終的に正解は自分の中にあると考えていたので、主体は常に自分であるように心がけました。海外に行った先輩に意見を求めるためにFacebookも活用して、アルバムに随時スタディをアップしていました。スタディはドローイングも模型も毎日更新することを目標に日付ごとに管理するようにしていました。秋の過ごし方として、逃げる時は思い切り逃げることを意識していました。行き詰った時には、がむしゃらに机に向かうよりも、別の場所で息抜きをしたり、おいしいものを食べたり、レモン画翠に行ってイメージトレーニングしたり(ちょっと買い物も)して、無理せずスランプを抜け出す工夫をしていました。僕にとってこの時期の収穫は右往左往しながら、基本となる形態操作のモデルと目指すべき作品像が描けたことだと思います。一日中卒業設計の事ばかり考えていると、時には脱線したり、迷走したりしますが、そんなときにここまで戻れば大丈夫と、そう思える軸を発見することが出来ました。

11月下旬には「どこまでも大きくなりながら同時にどこまでも細分化される建築」の提案と敷地とのミスマッチに悩みましたが、敵役となる高層建築が林立し得る敷地として新橋を候補に挙げていて、敷地見学に行って雑居ビルの合間をチクチクと歩いたり、東京タワーに登って俯瞰してみたりして、いろんなスケールで敷地を眺めた結果、スケールの大小のコントラストが強く感じられたことでゴーサインを出しました。


凝集期(直前1カ月)
焦りが積り積もったこの時期ですが、大好きなお酒も我慢してラストスパートに臨みました。直前期は精神論が飛び交いますが、僕が一番意識していたことは迷わないことと楽しむことです。残り1カ月をきったら、完成度が第一だと決めていました。不安や迷いが消えることはありませんが、心のすみっこで芽生える楽しいという感覚を大切にしました。この時期を振り返ると疲れはピークに達していましたが、一番楽しかったのもこの時期だったとおもいます。締め切りが近づくにつれてできることも限られてくるので、手持ちのカードを把握し、使えるものは極力活用して優先順位をつける冷静さも必要でした。僕はそこまで頭が回らなかったので、先輩にスケジュール管理してもらい後輩に負担を強いるという不甲斐なさでしたが。最終的には先輩・後輩・同期との連携が作品に命を吹き込みました。成果物に関してはこの時期の粘りが最も作品を光らせる要素となりました。


おわりに
提出からしばらく時間が経過すると、当時の興奮状態から覚めて、冷静に自分の作品が見えてきます。そこには自分の原点への気づきがあり、またそれはこれから先も続いていくものだと思います。そんなかけがえのない作品をサポートしてくれた周囲の皆さんに改めて感謝しています。またそんな卒業制作をこのような形で振り返る機会を与えて頂いたレモン画翠様に心より御礼申し上げます。